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techieなこと、書いてます

コミュ力とは何か(1)

はじめに

これから書こうと思うことを、飲み会帰りの気持ちの良い頭で出来る限り要約しようとしてみた結果が以下である。

「ひょっとして本当にコミュ力低いと思ってるんですか、ネタとか謙遜じゃなく」

「今の話、今年一番心にグサッときました」

舞台は会社の煙草部屋、ほんの5分程の立ち話だ。

言うまでもなく、最初の僕の科白に対するレスポンスとして次の科白があるわけではない。

それでは僕が誰かにひどい事を言ってしまっただけである。そうなると僕はまず他でもない、僕自身のコミュ力を考えた方がよく、大文字のコミュ力について考える余裕はないはずなのだ。

そうではなく、その行間には僕がずっと前からコミュ力について考えていたオレオレ理論なるものが彼には延々と打たれている。

いや、やはりそれも少し違う。

不幸な事に、それは実のところ真っ赤な嘘で、本当は最初の科白を聞いた瞬間に彼の声や表情や所作から僕がその場のノリで分析して、でっち上げただけのただのアドリブだ。

そうなのだから、今から書く事を鵜呑みにしたり、無いとは思うが目くじらを立てては駄目である。

水溜りも凍り始めた真冬の夜半、その冷たい布団を暖めるまでのちょっとした間になんとなく気を紛らわせようと読まれるくらいでなくては吊り合わない。

概論

さて、まずはこのアドリブで提起されたコミュ力とは何かについて、その全体をざっくりとまとめておこう。

  • コミュ力とは、他者に対して自身がどれくらい共感するのかというレベリングを適時適切に設定できる能力である
  • そのレベリングを行うステージは大きく二段階に分けられる
  • 前者のステージで必要なコミュ力を一次コミュ力とし、後者を二次コミュ力とする
  • 一次、二次両方のステージにおいて、絶えず適切にレベリングできる主体をコミュ力が高い主体として定義する

一次コミュ力

まず状況の説明が必要だろう。

あの時はたしか、僕が一本目の煙草に火を付け、これから仕掛かろうと思っていたプログラミングについての記事を眺めていたと思う。

そこに最近チーム替えが行われ、知り合ったばかりの僕より若い同僚が声を掛ける。挨拶をする。その次の言葉が問題だった。

彼はとても突拍子も無い事を急に切り出した。 しかも、すごく僕に気を使って色々と計算した挙句にその言葉が出ていたようだった。

今その言葉がどうしても思い出せないのが悔しいのだが、兎に角ひどく驚いた事を覚えている。

『これはどういう事なんだろう』

直ぐ様、彼に始めて会った頃に聞いた話が蘇った。

「僕って結構コミュ障なんですよねえ」

僕はその時は間違いなくそれは嘘だと思った。
少なくても謙遜だと思った。彼はよく笑い、よく話す普通の好青年だったからだ。

そうだったからこそ、その驚きは大きかったのだ。 そこで直ぐ様思わず口を衝いて出た言葉が、冒頭のあの科白だった。

なぜそのような言葉が出てしまったかの後付けの理由を僕はその直後に語った。それをまとめたものが小見出しにもなっている一次コミュ力だ。

それでは一次コミュ力とは何か、僕と彼の話の順を追う形で簡単にまとめてみよう。

  1. これまでの僕の人生でコミュ障には二つのタイプがあった
    1. 他者の内面に対する共感能力が著しく低く、たえず全く気を使えないタイプのコミュ障(以下、共感不足型コミュ障)
    2. 他者の内面に対する共感能力が著しく高く、たえず気を使い過ぎてしまうタイプのコミュ障(以下、共感過剰型コミュ障)
  2. 彼は相手の内面に共感しようという圧力が強すぎるためにディスコミが起こりやすくなるタイプ、即ち共感過剰型のコミュ障に極稀に陥ってしまうという分析結果が出た
  3. もし他者とディスコミを起こすという事象の統計を十分に取ると、それはY軸にコミュニケーション成功確率を取り、X軸に他者への共感量を取ったある確率分布によってモデル化できて、その時の確率分布モデルはおそらく正規分布になると予想
  4. つまり、共感量が少なくても多くてもディスコミが起こる確率は高くなる
  5. しかし、難しいのは上記のモデルはあくまで十分にサンプリングすればの話で、特定の他者一人だけの事象だけを抽出した時には当然のようにずれているはずなので、いつも同じ共感量で安牌という話にはならない
  6. したがって、ディスコミを完全に起こさないようには勿論できないが、中央値が分かって、且つ狙ってその量を出せるようになれば、ある程度減らすことはできそう

以上を話した段階で、コミュ力とは何かについて彼と僕はかなり合意が取れていた、と思う。お互いこれがコミュ力について結構上手く説明できているモデルだと直感したようだった。

次回予告

しかしながら物語はそう簡単ではなかった。

僕と彼が気持良く二本目の煙草に火を付けた直後、 そこに新たな同僚が現れたのだ。

「お疲れっす」

ここから二次コミュ力についての話に突入していった。

そして僕達三人はこの一次コミュ力には包摂されない、より高次のコミュ力が存在する事に段々と気が付いていくことになる。